【事案の概要】
国立病院の医師が血清検査証明書等を持参した給血者に対して、単に「身体は丈夫か」ときいただけで、それ以上の検査をしなかったため、輸血を受けた婦人が梅毒に感染してしまった。
【原判決】
国に不法行為による損害賠償義務を認めた。国が上告。
【本判決】
上告棄却。「いやしくも人の生命及び健康を管理すべき業務(医業)に従事する者は、その業務の性質に照し、危険防止のために実験上必要とされる最善の注意義務を要求されるのは、已むを得ないところと言わざるを得ない。」「然るに本件の場合は、A医師が、医師として必要な問診をしたに拘らず、なおかつ結果の発生を予見し得なかったというのではなく、相当の問診をすれば結果の発生を予見し得たであろうと推測されるのに、敢えてそれをなさず、ただ単に「からだは丈夫か」と尋ねただけで直ちに輸血を行ない、以つて本件の如き事態をひき起こすに至ったというのであるから、原判決が医師としての業務に照し、注意義務違背による過失の責ありとしたのは相当であり、所論違法のかどありとは認められない。」