離婚後の共同親権の制度が導入されることについては、本年3月9日のブログで紹介しましたが、2024年5月17日、離婚後の共同親権の導入を含む「民法等の一部を改正する法律」が成立しました(公布日は本年5月24日)。
ただし、施行日は、公布の日から起算して2年を超えない範囲内において政令で定める日となっています。ですので、すぐに共同親権制度が開始されるわけではありません。この点はご注意ください。
上記「民法等の一部を改正する法律」によって改正される共同親権制度について規定する民法第819条の条文は以下のとおりです。
第819条
父母が協議上の離婚をするときは、その協議で、その双方又は一方を親権者と定める。
2 裁判上の離婚の場合には、裁判所は、父母の双方又は一方を親権者と定める。
3 この出生前に父母が離婚した場合には、親権は、母が行う。ただし、この出生後に、父母の協議で、父母の双方又は父を親権者と定めることができる。
4 父が認知した子に対する親権は、母が行う。ただし、父母の協議で、父母の双方又は父を親権者と定めることができる。
5 第一項、第三項又は前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、父又は母の請求によって、協議に代わる審判をすることができる。
6 子の利益のため必要があると認めるときは、家庭裁判所は、子又はその親族の請求によって、親権者を変更することができる。
7 裁判所は、第二項又は前二項の裁判において、父母の双方を親権者と定めるかその一方を親権者と定めるかを判断するに当たっては、子の利益のため、父母と子との関係、父と母との関係その他一切の事情を考慮しなければならない。この場合において、次の各号のいずれかに該当するときその他の父母の双方を親権者と定めることにより子の利益を害すると認められるときは、父母の一方を親権者と定めなければならない。
一 父又は母が子の心身に害悪を及ぼすおそれがあると認められるとき。
二 父母の一方が他の一方から身体に対する暴力その他の心身に有害な影響を及ぼす言動(次項において、「暴力等」という。)を受けるおそれの有無、第一項、第三項又は第四項の協議が調わない理由その他の事情を考慮して、父母が共同して親権を行うことが困難であると認められるとき。
8 第六項の場合において、家庭裁判所は、父母の協議により定められた親権者を変更することが子の利益のため必要であるか否かを判断するに当たっては、当該協議の経過、その後の事情の変更その他の事情を考慮するものとする。この場合において、当該協議の経過を考慮するに当たっては、父母の一方から他の一方への暴力等の有無、家事事件手続法による調停の有無又は裁判外紛争解決手続(裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律(平成十六年法律第百五十一号)第一条に規定する裁判外紛争解決手続をいう。)の利用の有無、協議の結果についての公正証書の作成の有無その他の事情をも勘案するものとする。
共同親権制度の導入に対してはDV被害者保護に逆行するという理由からの強い反対論がありました。しかし、既に法律が成立した以上、2年以内に共同親権制度が施行されることは確定しています。重要なことは、現実にDV被害(精神的DV含む)を受けた事案について裁判所に共同親権を選択されてしまうことのないようにすることです。そのためには、DV被害の証拠(特に客観的証拠)がこれまで以上に重要となるように思われます。