民事訴訟法の改正により、住所、氏名等の秘匿制度(民事訴訟法第133条以下)が創設され、2023年(令和5年)2月に施行されました。
犯罪の被害にあって損害を被った場合、加害者に対して訴訟を提起して損害賠償を請求することができるのですが、住所や氏名を加害者に知られることを恐れて、訴訟を躊躇してしまうことがないように、この制度が創設されたものです(この制度の創設前は、第三者に対する閲覧の制限については民事訴訟法第92条の秘密保護のための閲覧制限の制度がありましたが、他方当事者の閲覧を制限する規定はありませんでした)。
1 秘匿決定の対象となる情報
→ 「申立て等をする者又はその法定代理人」の「住所等」と「氏名等」
「住所等」・・住所、居所、その他その通常所在する場所
「氏名等」・・氏名その他当該者を特定するに足りる事項
2 秘匿決定の要件
申立て等をする者又は当該法定代理人が「社会生活を営むのに著しい支障を生ずるおそれがあること」について「疎明」があること(一応確からしいという推測を得させる程度の証拠を挙げることが必要)
3 手続
(1) 秘匿決定の申立てが必要(疎明資料の提出も必要)
(2) 申立に際し、秘匿すべき事項(真の住所等、氏名等)の内容を記載した秘匿事項届出書面の提出が必要
4 秘匿決定の効果
裁判所は、秘匿対象者の住所又は氏名について秘匿決定をする場合には、当該秘匿決定において、当該秘匿対象者の住所又は氏名に代わる事項を定めなければなりません。
この場合において、その事項を当該事件並びにその事件についての反訴、参加、強制執行、仮差押え及び仮処分に関する手続において記載したときは、この法律その他の法令の規定の適用については、当該秘匿対象者の住所又は氏名を記載したものとみなされます。
→ 秘匿決定で定めた住所又は氏名の代替事項を記載すれば、真の住所又は氏名の記載は不要です。
→ 他の当事者等による秘匿事項届出書面の閲覧等は制限されます。
→ 代替事項が記載された判決に基づき、強制執行が可能です。