婚姻を継続し難い重大な事由がある、すなわち、婚姻関係が既に破綻しており回復の見込みがない、といえるかどうかを判断する重要な事実として別居の有無及びその期間の長短を挙げることができます。
これから紹介する判決ですが、第1審が約3年5ヶ月の別居期間は短いなどとして離婚請求等を棄却したのに対し、控訴審でである東京高裁平成28年5月25日判決は、別居期間4年10ヶ月の別居期間が長く、しかも、別居後の相手方の行動等から婚姻関係の修復に向けた意思を有していることに疑念を抱かせる事情があるとして、離婚請求を認容しました。単に別居期間の長短だけで婚姻関係の破綻を判断しているわけでない点は注意を要するところですが、4年10ヶ月の別居期間を重視している点は注目されます。
【東京高裁平成28年5月25日判決】
「前記認定事実によれば、XとYとは,平成14年□月に婚姻し、その後同居生活を続けたものの、遅くとも平成18年□月頃からは言い争うことが増えたこと、その後、Xは、Yの帰宅時間が近づくと息苦しくなるようになり,平成23年□月頃から神経科を受診し始めたこと,そのような中,同年□月,長男が所在不明となる出来事を契機に,その際のYの対応に失望したXが長男を連れて本件別居に至ったことを認めることができる。以上のとおり、本件別居の期間は,現在まで4年10か月間余りと長期にわたっており、本件別居についてYに一方的な責任があることを認めるに足りる的確な証拠はないものの、上記のとおりの別居期間の長さは、それ自体として、XとYとの婚姻関係の破綻を基礎づける事情といえる。
また、前記認定事実のとおり、Xは、本件別居後、一貫してYとの離婚を求め続けており、原審におけるX本人尋問においても離婚を求める意思を明らかにした。
他方、Yは、原審におけるY本人尋問において、Xとの関係修復の努力をするとの趣旨の供述をしたが、本件別居後、Yが、婚姻関係の修復に向けた具体的な行動ないし努力をした形跡はうかがわれず、かえって、前記認定事実のとおり、別件婚費分担審判により命じられた婚姻費用分担金の支払を十分にしないなど、Yが婚姻関係の修復に向けた意思を有していることに疑念を抱かせるような事情を認めることができる。
以上のとおり、別居期間が長期に及んでおり、その間、Yにより修復に向けた具体的な働き掛けがあったことがうかがわれない上、Xの離婚意思は強固であり、Y人の修復意思が強いものであるとはいい難いことからすると、XとYとの婚姻関係は、既に破綻しており回復の見込みがないと認めるべきであって、この認定判断を左右する事情を認めるに足りる的確な証拠はない。
したがって、Xの離婚請求には理由がある。