配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(DV防止法)の一部を改正する法律が令和5年5月12日に成立しました。改正法は、令和6年4月1日から施行されました。
改正法でもっとも重要な点は、接近禁止命令等を申し立てることのできる被害者の範囲を拡大したことです。
改正法では、接近禁止命令を申し立てることのできる被害者について、次のように規定されています。
第10条
被害者(配偶者からの身体に対する暴力又は生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知してする脅迫(以下この章において「身体に対する暴力等」という。)を受けた者に限る。以下この条並びに第十二条第一項第三号及び第四号において同じ。)が、配偶者(配偶者からの身体に対する暴力等を受けた後に、被害者が離婚をし、又はその婚姻が取り消された場合にあっては、当該配偶者であった者。以下この条及び第十二条第一項第二号から第四号までにおいて同じ。)からの更なる身体に対する暴力等により、その生命又は心身 に重大な危害を受けるおそれが大きいときは、裁判所は、被害者の申立てにより、当該配偶者に対し、命令の効力が生じた日から起算して一年間、被害者の住居(当該配偶者と共に生活の本拠としている住居を除く。以下この項において同じ。)その他の場所において被害者の身辺につきまとい、又は被害者の住居、勤務先その他その通常所在する場所の付近をはいかいしてはならないことを命ずるものとする。
改正前は、身体に対する暴力を受けた者と生命又は身体に対する加害の告知による脅迫を受けた者が申立てをすることができるとされていましたが、改正法では、これに加え、「自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知してする脅迫」を受けた者が追加されました。
さらに、他の要件についても、改正前は、「身体に対する暴力」により「生命又は身体に重大な危害を受けるおそれが大きいとき」とされていた要件について、「更なる身体に対する暴力又は生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知してする脅迫」により「生命又は心身に重大な危害を受ける恐れが大きいとき」と改正され、精神に重大な危害を受けるおそれが大きいときも、接近禁止命令の要件を満たすことになりました。
この改正により、本法は、身体的暴力の危険から被害者を守る制度から、精神的暴力も含む暴力の危険から被害者を守る制度に変わったといえます。
また、接近禁止命令の期間も6ヶ月から1年間に伸長されました。
また、保護命令に違反した者に対する罰則についても、改正前の「1年以下の懲役又は100万円以下の罰金」から、「2年以下の懲役又は200万円以下の罰金」へと厳罰化されました。