【事例】
A(60歳)からの相談:私は、昭和60年にBと婚姻し、B及びBの父親Cと3人で暮らしてきましたが,Bは平成10年に交通事故で死亡し、Bの死にショックを受けたCも同じ年に脳梗塞を発症して半身不随になってしまい、私がCを自宅で介護していました。Cには長男Bのほかに、二男D、三男Fがいるのですが、D、Fはいずれも遠方で暮らしていて、全く介護に協力してくれませんでした。そして、Cは令和2年8月1日に亡くなりました。
【相談】
私は20年以上Cを介護してきたのですが、Cが亡くなった後、何か権利を主張することができないでしょうか。
〔改正法施行前〕
被相続人に対する療養看護等により被相続人の財産の維持または増加について特別の寄与をした者が相続財産から分配を受けることを認める制度として、寄与分の制度がありますが(民法904条の2)、寄与分は相続人にのみ認められています。Aは長男の嫁ですが、相続権がありません。したがって、AはCが遺贈でもしてくれない限り、Cの遺産相続において権利主張ができませんでした。
〔改正法施行後〕
(1) 被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持または増加について特別の寄与をした被相続人の親族は、相続の開始後、相続人に対し、特別寄与料の支払いを請求することができるようになり(民法1050条)、相続人でない者による貢献に報いることができるようになりました。
(2) 要件
ア 被相続人の親族であること
イ 療養看護その他の労務の提供をしたこと
ウ 無償であること
エ 被相続人の財産の維持または増加について特別の寄与をしたこと
(3) 期間制限
相続人との協議が調わないときは,家庭裁判所に協議に代わる処分を請求することができます。
ただし、特別寄与者が相続の開始及び相続人を知ったときから6ヶ月を経過したとき、または相続開始の時から1年を経過したときは、家庭裁判所への協議に代わる処分の請求ができなくなりますので、要注意です。
(4) 施行日は、2019年(令和元年)7月1日です。2019年(令和元年)7月1日より前に亡くなった方の相続については適用がありませんので、ご注意下さい。