【事例】
A(65歳)からの相談:私は、昭和60年にBと結婚し、その後、一人息子のCが生まれました。Cは現在30歳で、結婚して、別に家を建てて暮らしています。私は、結婚して間もなく購入した静岡市にあるB名義の自宅(土地と建物の時価合計2000万円)にてBと一緒に暮らしてきましたが、Bはガンのため,令和3年8月1日に死亡しました。Bの遺産は自宅と貯金2000万円です。なお、私は現在年金生活をしており、私名義の預金はわずかしかありません。

【相談】
自宅土地建物の取得を希望するCとの遺産分割協議がまとまらないまま今日に至っているのですが、嫁にそそのかされたCは、私に対して、家賃を払うか、出て行って欲しいと言ってきています。私は応じなければならないのでしょうか。

〔改正法施行前〕 
これまで、遺産分割前の居住権については明確な規定はなく、判例(平成8年12月17日最高裁判決)によって、配偶者の居住権保護が図られてきました(当事者意思の合理的解釈により使用借権を認める。したがって、被相続人が異なる意思を明示していた場合には保護されません)。

〔改正法施行後〕 
(1)  遺産分割が成立するまでなどの間における配偶者の短期的な居住権を保護するため、配偶者短期居住権の制度が創設されました(民法1037条以下)。
配偶者短期居住権とは、配偶者が、居住していた建物の所有権を相続または遺贈により取得した者に対し、居住建物について無償で使用する権利をいいます。

(2)  要件
配偶者が「被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に無償で居住していた」ことが必要。

(3)  存続期間
ア 配偶者を含む共同相続人間で遺産分割をすべき場合
→ 遺産の分割により居住建物の帰属が確定した日または相続開始の時から6ヶ月を経過する日のいずれか遅い日まで
イ それ以外の場合
→ 配偶者短期居住権の消滅の申入れの日から6ヶ月を経過する日まで

(4)  回答
遺産分割が終了する時まで無償で住み続けることができます。家賃を支払う必要はありません。

(5)  施行日
配偶者短期居住権に関する規定の施行日も、2020年(令和2年)4月1日です。2020年(令和2年)4月1日より前に亡くなった方の相続については、配偶者短期居住権に関する規定の適用はありませんので、ご注意下さい。

 

相続

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