平成30年7月6日に「法務局における遺言書の保管等に関する法律」が成立し、令和2年(2020年)7月10日から、「自筆証書遺言書保管制度」が開始されました。
自筆証書遺言書とは、遺言者が全文、日付、氏名を自署し、押印した遺言書のことをいいます(民法968条1項)。自筆証書遺言書保管制度が開始されるまでは、自筆証書遺言を行った場合、遺言書を自分で保管しておかなければならず、遺言書の紛失や、相続人によって隠匿・廃棄される危険がありました。さらに、死亡後、遺言書を家庭裁判所に提出して、検認の手続を行うことが必要でした(民法1004条)。
自筆証書遺言書保管制度に基づき、遺言書の保管の申請をすれば、自筆証書遺言書を法務局で保管してもらえます。これにより、遺言書の紛失や、相続人による隠匿・廃棄の危険を回避することができます。
申請先は、遺言者の住所地もしくは本籍地または遺言者が所有する不動産の所在地を管轄する法務局(遺言書保管所)の遺言書保管官です。
法務局で保管してもらっている自筆証書遺言については、検認の手続が不要となります。検認の手続きは面倒なので、相続人は助かりますね。
自筆証書遺言書保管制度において、相続人等は、遺言者の方が亡くなった後(相続開始後)、下記のことを行うことができます。
(1) 遺言書保管事実証明書の交付の請求
この証明書を請求することにより、①請求者が、請求書に記載した特定の遺言者の相続人である場合、特定の遺言者の遺言書が、遺言書保管所に保管されているかどうか、②請求者が、請求書に記載した
特定の遺言者の相続人でない場合、特定の遺言者の、請求者を受遺者等・遺言執行者等とする遺言書が、遺言書保管所に保管されているかどうかの確認をすることができます。
(2) 遺言書情報証明書の交付の請求
この証明書は、遺言書の画像情報が全て印刷されており、遺言書の内容を確認することができます。また、遺言書保管所に保管された遺言書は、遺言者自身からの撤回以外には、相続人であっても返還することはできませんので、遺言書原本の代わりとして各種手続に使用いただくこととなります。
(3) 遺言書の閲覧(モニター/原本)の請求
相続人等の方は、遺言書の内容を確認するため、遺言書保管所に対して、遺言書の閲覧の請求をすることができます。
自筆証書遺言書保管制度の詳細は、法務省のホームページに詳しい解説がありますので、そちらを参照願います。