民法の一部を改正する法律(平成29年法律第44号)が2017年(平成29年)に成立して民法が改正され、この改正民法は、2020年(令和2年)4月1日から施行されました。この民法改正により、債権の消滅時効期間が変更されました。

【改正後の民法の規定】(抜粋)
第166条  債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
 1 債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき
 2 権利を行使することができる時から十年間行使しないとき。
第167条  人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効についての前条第1項第2号の規定の適用については、同号中「十年間」とあるのは、「二十年間」とする。

改正前の民法では債権の原則的な消滅時効期間は、権利を行使することができる時から10年でしたが、これに加えて、「権利を行使することができることを知った時」から5年という主観的起算点からの消滅時効期間を追加し、そのいずれかが経過した場合には、時効により債権が消滅することになったのです。

他方、人の生命・身体の侵害による損害賠償請求権については、その保護を図るため、権利を行使することができる時から10年という時効期間が、20年に伸張されています。

その結果、上記改正民法施行前の時代は、診療契約に基づく債務不履行を原因とする損害賠償請求権は少なくとも10年間は時効消滅しないという安心感?があったのですが、2020年(令和2年)4月1日以降に病院で診療を受けて医療事故の被害に遭った場合、場合によっては、5年で、診療契約に基づく債務不履行を原因とする損害賠償請求権が時効消滅してしまう危険性があることになりました。2020年(令和2年)4月1日以降に診療を受けて医療事故の被害に遭った方については、損害賠償請求権の時効に注意することが必要です。

【経過措置】
債権の消滅時効の期間に関する経過措置として、「施行日前に債権が生じた場合」(施行日以後に債権が生じた場合であって、その原因である法律行為が施行日前にされたときを含む)におけるその債権の消滅時効の期間については、なお従前の例によるとされています(改正民法附則第10条1、4項)。

つまり、たとえば、2020年(令和2年)4月1日に改正民法が施行される前の2018年に医療事故の被害に遭った場合、診療契約に基づく債務不履行を原因とする損害賠償請求権の消滅時効の期間については改正前の民法の規定が適用され、10年間は時効消滅しないということになります。

医療事件

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